【レビュー】映画「関心領域」を観た – 完全にトラウマ

この人は誰々で今何が起こっていて、これからどうなるのかなど一切説明なく進むので、劇中に「ん?」と思うところがいくつもあった。歴史背景や人物などある程度知識があった方が良いと思う。

以前NHKのドキュメンタリーでアウシュビッツ歴史や現在は博物館になっている場所を見た事があったので、劇中のあるシーンでハッとさせられた。このナチスドイツ最大の強制収容所では100万人以上のユダヤ人が殺害された「ホロコースト」というものだ。その強制収容所の隣の屋敷の人々(収容所所長ヘス一家)の話なのだが、映画を見ていない人もこんの環境でどういった事を想像できるだろうか?

個人的に結構トラウマになる映像というか音だった。例えば夜に家の外で「犬が吠えている」ということがあると思うが、それは当たり前の日常の中の出来事で余程のことがない限り生活に支障はなく、ほとんどの場合何も思わない。この何か起きてるけど何も思わなくなってしまった環境、当たり前のことに慣れて関心がなくなっているという意味で「関心領域(The Zone of Interest)」というタイトルはとてもわかりやすい。

映画が始まって不気味な音とともに突然の暗転、真っ暗で始まらない事故かなと思った。家族のレジャーシーンから屋敷へ。そこから屋敷のシーンの背景では、うめき声や泣き叫ぶ声銃声がほぼ聞こえていたと思う。誰一人としてその声に言及する人がいないので最初自分の空耳かと思った。映画館で観るのと家で観るのとでは変わってくる作品だと思った。映画館の静寂がよりこの作品に没入させてくる。虐殺のシーンは一切なく黒い煙が煙突から上りつづけることが比喩として伝わる。遊びに来た母親が異様さに気がついてある行動を起こした。煙で咳き込むシーンなどあったため、匂いなどもあっただろうか。おそらく唯一の救いのシーン。

ところで、このヘスの奥様は初めてこの屋敷に来た時、何を思っていつから関心がなくなってしまったのだろう。現在の博物館のシーンもスタッフが展示物の前で掃除をし、それぞれの日常の中で…。強烈な作品だった。


スズキロク
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